契約書作成

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契約の成立について

契約の成立は,原則として当事者間の合意によって成立します。契約が成立すると一定の法律効果が発生しますが,合意の内容・方法によっては,合意どおりの法律効果の発生が認められなかったり,契約そのものが無効になったりする場合もありますので,注意が必要です。

 契約とは,対立する複数当事者間の意思表示の合致によって成立する法律行為です。
 対立する意思表示が合致する典型例としては,例えばAさんが「Xを100万円で売ろう」という意思表示をしたのに対し,Bさんが「Xを100万円で買おう」といった意思表示をする場合がこれにあたります。

 この意思の合致があると,AB間には売買契約が成立します。その成立した契約に基づいて,当事者間に一定の法律関係が発生します。
 売買契約は,当事者双方が一定の義務(債務)を互いに負う契約(民法555条,双務契約)です。
 前述の例では,AB間には次のような法律関係(債権・債務)が発生します。

 Aさん ・・・ Xを引き渡す義務(債務)
 Bさん ・・・ Xの代金100万円を支払う義務(債務)

法律学上(講学上)は,次のように債権を中心として考え,矢印で表現することがあります(矢印の基点が債権者,矢の先が債務者)。

売主 買主
A 代金請求権(債権)
--------------------→
B
←--------------------
目的物引渡請求権(債権)

双務契約では,一方当事者は債権者であると同時に債務者です。Aは代金との関係では債権者ですが,物の引渡しとの関係では債務者です。
「債権」とは,一方の当事者が相手方に対して一定の給付・行為を求めることが出来る地位,などと説明されます。「債権」という用語は,「売掛金債権」「代金債権」といった金銭の給付を目的とする債権を表すことが多いのですが,「除雪作業をしてもらう」「家を建ててもらう」「部屋を貸してもらう」といったものも,「債権」に含まれます。
 一旦発生した債権は,当事者が債務を履行するなどして,その目的を達せられると消滅します。


 以上が契約成立の基本形です。

 現実の取引・合意の場面では,引渡日時・場所・支払方法・利息や遅延損害金の定め・契約費用その他諸費用の負担・不履行の場合の取り扱い・契約の解除・保証や担保・管轄裁判所,等々,付随する様々な取り決めがなされます。
 これらの取り決めも,基本的には当事者の合意のみによって可能です。

 注意すべきであるのは,後述するように当事者の合意のみによっては成立しない契約や,書面の作成交付が必要になる契約があることです。

 また,契約自由の原則といっても,その合意の内容が公序良俗違反であったり強行法規に反する場合(労働基準法・借地借家法・利息制限法・各種消費者保護関連法など)には,合意どおりの法律効果が発生しなかったり,契約そのものが無効になる場合があります。

 契約の締結にあたっては,「自分に有利かどうか」という点に目が行きがちですが,そうした基本的な部分に法的問題がないかどうか,慎重な検討も必要といえるでしょう。

契約書作成にあたっての一般的留意事項

民法の一般原則では契約は合意のみによって成立することになっていますが,契約書等の書面作成が効力発生要件になっている場合もあります。特別法によって書面の作成・交付が義務付けられていたり,登記その他の各種許認可登録申請への添付書類・確認資料として必要になったりする場合もあります。

 民法に明文の規定はありませんが,その根底には「私的自治の原則」(本来,自由・平等である個々人を拘束し,法律関係を成り立たせているのは,まさに個々人それぞれの意思であるとする考え)があります。

 この私的自治の原則の一つの現れとして,「契約自由の原則」という考え方があります。
 
 契約自由の原則は,以下のような内容からなります。
(1)締結の自由 ・・・ 契約するかどうか
(2)相手方選択の自由 ・・・誰と契約するか
(3)内容の自由 ・・・ どのような契約をするか
(4)方式の自由 ・・・ どのような方式で契約するか

 ところが,この契約の自由は,それをそのまま貫徹すると様々な弊害をもたらすため,現代においては修正が施されています。

○借地借家法による修正 
○労働基準法による修正
○特定商取引法・消費者契約法等,各種消費者保護法による修正
・・など,特別法は多岐に渡ります
 
 契約書(書面)作成との関係では,以下のような修正の存在に留意する必要があります。

○定期借地契約は,公正証書によってしなければ効力を生じない
○労働基準法に抵触する労働契約の全部又は一部は無効となる(労基法の最低基準に満たない条件は,自動的に労基法の定める最低基準に引き上げられる)
※労働契約の内容の一部には,書面の交付による明示が義務付けられているものがあります
○あらかじめ法定された契約については,法定書面の受領から一定期日以内に,一方的に申込や承諾の取消・契約解除ができる(書面でなすことが必要)

 近時,民法それ自体が修正を受けた部分もあります。保証契約(連帯保証を含む)は,書面をもってしなければ効力が生じないこととされました。
 契約書の作成にあたっては,そもそも作成すべきかどうか悩む場合もあります。
 堅苦しいので作成しない,といった当事者間の事情もあることでしょう。
 しかし,前述のように当事者の意思如何に関わらず作成や交付が求められる場合もありますので,どのような法律関係の形成を目指すのか・いかなる法規制に服することになるのかについても,充分検討する必要があるでしょう。

 なお,契約の効力に影響しなくても,後日,契約が存在することを証明する場面に遭遇することもあります。

 例えば,公的機関に許認可や登録の申請をする場合,場所的要件(本店事務所の使用権限が存在することなど)を求められることがあります。

 必要となってから作成することもできなくはありませんが,いざ押印や署名をもらおうとした時に当事者が遠方にいるとか,「そういう内容ではなかった」などと当事者の意思の食い違いが露になるトラブルが生じないとも限りません。
 
 さらに,契約成立後,不幸にして契約が守られなかった場合,裁判所に対して訴えを提起し強制的に契約の内容を実現(代金回収など)をすることとなるかもしれません。
 勝訴判決を勝ち取るためには,原則として債権の存在(契約の成立)そのものを証明する必要があります。
 口約束だけであった契約の成立を後から証明すること,不可能ではないにしろ,高度な訴訟技術が必要であるなど,非常に困難を伴います。
 
 契約書作成に馴染みがないのは国民性が理由の一つかもしれません。また,欧米のような契約社会は,我々にとっては行き過ぎと映る部分もあることも確かです。

 契約書が持つ効能や意義に鑑みると,然るべき場面においては,躊躇することなく,適切な内容の契約書を作成していく姿勢が大切かもしれません。

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